
「事業計画書を作らないといけないけど、何から手をつけていいかわからない」。多くの経営者がこの壁にぶつかります。私自身も3社を経営してきましたが、最初の事業計画書は何度も書き直して完成まで数週間かかりました。
ところが、AIを経営の右腕として使い始めてから状況が一変しました。ai株式会社の新規事業を立ち上げるとき、AIと一緒に事業計画書を作成したところ、骨子の完成まで数時間。しかも、ポーターの5Forces分析やVRIO分析、損益分岐点シミュレーションまで一気に走らせることができました。
この記事では、私が実際にAIと事業計画書を作った体験をもとに、具体的な手順、活用すべき経営フレームワーク、そして「銀行向け」と「自分用」で計画書を分ける考え方まで、6,000文字超で詳しく解説します。
AIで事業計画書を作るメリット――3社経営で実感した3つの価値

AIを事業計画書作成に活用することで、従来の方法と比較してどのようなメリットがあるのか。3社を立ち上げた経験と照らし合わせてお伝えします。
1. 思考のスピードが桁違いに上がる
事業計画書の骨子を作るだけで、従来は数日かかっていた作業が数時間に短縮されます。AIに事業の概要を伝えると、SWOT分析、ターゲット市場の整理、収益モデルの設計、リスク分析まで、各セクションのたたき台を一気に生成してくれます。
私がai株式会社の顧客紹介事業を設計したとき、AIに「この事業モデルで損益分岐点はどこか」と聞いたら、固定費・変動費・想定単価から逆算して月間必要件数まで即座に算出してくれました。自分で表計算ソフトと格闘していた頃とは比べものになりません。経営者が判断と修正に集中できる状態を早く作れること、これが最大のメリットです。
2. 抜け漏れを構造的に防げる
事業計画書には、市場環境分析、競合分析、ターゲット顧客の定義、バリュープロポジション、収益モデル、実行計画、リスク分析、KPI設計など、多くのセクションが必要です。1社目の起業のときは、自分の得意分野(サービス設計や顧客獲得)に偏ってしまい、資金繰り計画やリスク分析が手薄になっていました。
AIに「事業計画書に必要な構成要素をすべてリストアップして、特に中小企業が見落としやすい項目を強調して」と依頼すれば、抜け漏れチェックが一発で完了します。実際、AIに指摘されて初めて「撤退基準」のセクションを追加したこともあります。
3. 複数の視点から検討できる
「投資家の視点から見て、この計画の弱点はどこか」「競合他社がこの計画を見たらどう対応するか」「銀行の融資担当者はこの計画書のどこを重点的に見るか」。こうした問いかけに、AIは論理的な回答を返してくれます。
経営者が一人で考えるとどうしても自分の事業に対するバイアスがかかります。私も「この事業は絶対にうまくいく」と思い込んでいた時期がありました。AIという「利害関係のない第三者」に冷静に分析させることで、盲点を発見できます。
事業計画書は2種類ある――銀行向けと自分用を分ける

3社経営してきてわかったことがあります。事業計画書は「銀行・投資家向け」と「自分用」の2種類を作るべきだということです。
銀行向けの事業計画書
融資を受けるための事業計画書は、収益の確実性と返済能力を示すことが最優先です。保守的な数値、明確な市場根拠、リスク対策が求められます。AIには「銀行の融資審査担当者が重視するポイントを踏まえて、この事業計画を評価してください」と指示すると、的確なフィードバックが返ってきます。
具体的には、売上予測の根拠(市場規模×シェア率)、固定費の内訳、キャッシュフロー計算、そして万一の場合の返済原資。これらを数字で示す必要があります。
自分用の事業計画書(仮説検証型)
一方で、自分用の事業計画書は「仮説→検証→修正」のサイクルを回すためのツールです。完璧に作ることより、素早く仮説を立てて市場に出し、フィードバックを得て修正する方が100倍重要です。
私はai株式会社で新規事業を立ち上げるとき、AIに「エフェクチュエーションの観点で、今の手持ちリソースから最小コストで始められる事業を設計してほしい」と依頼しました。完璧な計画を立ててから動くのではなく、「まず小さく始める」ための計画書をAIと一緒に作ったのです。結果的に、この「仮説検証型」のアプローチが最も有効でした。
AIと事業計画を作る前に準備するもの
どちらのタイプの計画書を作る場合でも、AIに渡す情報は同じです。事前に以下を箇条書きでまとめておくと、精度の高いアウトプットが得られます。
- 事業の概要:何を、誰に、どのように提供するか(1〜2文で言えるレベル)
- ターゲット顧客の仮説:どんな課題を持つ、どんな人・企業か
- 市場規模の感覚値:規模感が分かる数字(業界レポートや公的統計データ)
- 競合・類似サービスの情報:直接競合と間接競合のリスト
- 自社の強み・資源:技術・人材・ネットワーク・資金・既存事業の基盤
- 収益モデルの仮説:どうやってお金を稼ぐか(手数料・月額・販売・紹介等)
- 用途:誰に見せるか(銀行・投資家・社内検討・自分用)
すべてが揃っていなくても構いません。不明な点はAIに聞きながら埋めていくスタイルで問題ありません。むしろ、「ここがわからない」とAIに正直に伝えた方が、的確な補足質問をしてくれます。
AIを使った事業計画書の作成手順――5つのステップ

ここからは、私が実際にAIと事業計画書を作った手順をステップごとに解説します。
ステップ1:事業の全体像をAIに伝える
最初に、AIに事業の基本情報を伝えます。「私が考えている事業を説明します。一緒に事業計画書を作ってください。」という前置きをしてから、準備した情報を箇条書きで渡します。
ポイントは、最初のやり取りでAIが事業の全体像を理解できる状態を作ること。中途半端な情報だと、AIのアウトプットも中途半端になります。「完璧でなくていいから、知っていることは全部伝える」が鉄則です。
ステップ2:構成をすり合わせる
「この事業計画書に必要なセクションを提案してください」と依頼し、AIが提案した構成を確認します。ここで重要なのは用途の明示です。「この計画書は銀行融資のために作る」なのか「自分の仮説検証用に作る」なのかで、構成が大きく変わります。
私の場合、自分用の計画書ではAIに「損益分岐点シミュレーションとKPI設計のセクションを必ず入れてほしい」と指定しました。この2つがないと、事業を始めた後に「うまくいっているのかどうか」が判断できないからです。
ステップ3:フレームワークを指定してセクションを生成する
構成が決まったら、セクションごとにコンテンツを生成します。ここで経営フレームワークを明示的に指定すると、分析の深さが格段に上がります。
例えば「市場環境分析のセクションを、ポーターの5フォース分析を使って書いてください」と指示するだけで、5つの競争要因を網羅した分析が得られます。フレームワークの詳細は次のセクションで解説します。
ステップ4:損益分岐点をシミュレーションする
事業計画書で最も重要なパートの一つが損益分岐点シミュレーションです。AIに固定費(家賃・人件費・システム費用等)と変動費(広告費・外注費等)、想定単価を伝えると、月間何件の成約で黒字になるかを即座に計算してくれます。
私がai株式会社の事業計画を作ったときは、3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)でシミュレーションを走らせました。悲観シナリオでも6ヶ月以内に損益分岐点を超えられる設計にする、というのが私の基準です。AIにシナリオごとの前提条件を変えさせて比較するのは、手作業だと膨大な時間がかかりますが、AIなら数分で完了します。
ステップ5:数値は必ず自分の目で検証する
AIが生成する市場規模の数字や収益予測は、あくまで仮説ベースです。実際の数値は公的統計、業界レポート、自社の実績データを使って検証し、置き換えてください。
特に銀行向けの計画書では、数値の根拠を「○○省の統計データによると」「業界団体の調査では」と明示する必要があります。AIの出力をそのまま使うのではなく、「たたき台として使い、根拠は自分で裏取りする」が正しい使い方です。
事業計画書で使うべき経営フレームワーク4選

AIに指示を出す際に、経営フレームワークを明示することで分析の質が劇的に変わります。ここでは、私が実際に事業計画書で使った4つのフレームワークを、実践的な使い方とともに紹介します。
ポーターの5フォース分析――競合環境を構造的に理解する
業界の競争環境を「既存競合の脅威」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「供給業者の交渉力」の5つの力で分析するフレームワークです。
私がコンサル事業の計画を立てたとき、AIに5フォース分析を依頼したところ、「新規参入の脅威が高い(参入障壁が低い業界)」という指摘を受けました。そこから「では、何で参入障壁を作るか」という議論に発展し、結果的に「実体験に基づくノウハウ」と「LINE WORKSを活用した自動化の仕組み」を差別化要因として計画に盛り込みました。単なる分析で終わらず、戦略に直結させることが重要です。
VRIO分析――自社の強みが本物かどうかを検証する
自社のリソースや能力が「価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Imitability)」「組織(Organization)」の観点で持続的な競争優位をもたらすかを評価するフレームワークです。
AIに「VRIO分析で、自社の強みが持続的な競争優位につながるかを評価してください」と依頼すると、自分では「強み」だと思っていたものが実は「模倣容易」だった、という厳しい現実を突きつけられることがあります。私の場合、「20年の経営経験」はValue(価値)とRarity(希少性)はあるが、それだけでは模倣困難ではない。AIとの組み合わせで「経営経験×AI自動化」という独自のポジションを作ることで、初めてImitability(模倣困難性)が成立する、とAIに指摘されました。
エフェクチュエーション――リソースベースで事業を設計する
エフェクチュエーションは、起業家研究者のSaras Sarasvathyが提唱した理論です。「将来の目標から逆算する」(コーゼーション)のではなく、「今持っているリソースから始める」という発想で事業を設計します。
私はこの考え方に強く共感しています。3社目のai株式会社を立ち上げるとき、大きな初期投資はかけず、既存の経営ネットワークとAIツールという「手持ちのリソース」から始められる事業を選びました。AIに「エフェクチュエーションの5原則(手中の鳥・許容可能な損失・クレイジーキルト・レモネード・パイロット)に沿って、このリソースで始められる事業オプションを3つ提案してください」と依頼すると、リスクを最小限に抑えたスタートプランが得られます。
SWOT分析+クロスSWOT――状況整理から戦略立案まで
強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)を整理するSWOT分析は最も基本的なフレームワークですが、AIを使うと「クロスSWOT」まで一気に進められるのが強みです。
AIに「SWOT分析を行い、その結果からクロスSWOT戦略(強み×機会の積極戦略、弱み×脅威の回避戦略)を提案してください」と指示すると、単なるSWOTの列挙を超えた戦略的示唆が得られます。特に「弱み×脅威」の象限は、一人で考えるとつい目を背けたくなる部分ですが、AIは容赦なく指摘してくれるので助かります。
実際の活用例――ai株式会社の事業計画をAIと作った話

ここからは、私がai株式会社の新規事業計画をAIと一緒に作った具体的なプロセスを紹介します。
Phase 1:エフェクチュエーションで事業の方向性を決める
最初にAIに伝えたのは「20年の経営経験がある」「IT基盤の構築経験がある」「AIツールを日常的に使っている」「大きな初期投資はしたくない」という4つの情報です。エフェクチュエーションの観点で「今あるリソースで始められる事業」を検討した結果、既存の業界知識を活かした顧客紹介事業が最も許容可能な損失の範囲内で始められるという結論になりました。
Phase 2:ポーターの5フォースで市場を検証する
事業の方向性が決まったら、5フォース分析で「本当にこの市場で戦えるか」を検証しました。AIに業界の構造を伝えると、「既存プレイヤーは大手マッチングサイトが中心だが、地域密着型のサービスは少ない」「供給業者(提携先)との関係構築が参入障壁になりうる」という分析が返ってきました。
Phase 3:損益分岐点とKPIを設計する
最も実務的に役立ったのがこのフェーズです。AIに固定費と変動費の想定値を伝え、3シナリオで損益分岐点シミュレーションを実行しました。さらに、「この事業のKPIツリーを設計してください」と依頼し、トップKPI(月間成約数)からドリルダウンして、サイト訪問者数→問い合わせ率→成約率というKPIの階層構造をAIと一緒に設計しました。
このKPI設計があったおかげで、事業開始後に「何を見ればいいか」が明確になり、日次・週次のレポートもKPIに紐づいた形で自動化できました。事業計画書は「作って終わり」ではなく、運営のダッシュボードになるべきだと考えています。
Phase 4:仮説検証サイクルを回す
事業計画書を完成させた後が本番です。計画書に書いた仮説(市場規模、顧客獲得コスト、成約率)を実データで検証し、月次で計画を修正しています。AIに「今月の実績データは○○です。事業計画の前提と比較して、修正すべき点を指摘してください」と依頼すれば、計画と実績の乖離分析が即座に得られます。
3社経営してきた実感として、事業計画書は「完璧に作る」ことより「素早く作って、素早く直す」方が100倍重要です。AIはこの「仮説→検証→修正」サイクルのスピードを劇的に上げてくれます。3年計画を立てる場合も同様で、年次で大きな方向性を決めつつ、月次・週次で軌道修正を繰り返すのが実践的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIが作った事業計画書をそのまま銀行に提出してもいいですか?
そのまま提出するのはおすすめしません。AIが生成する数値は仮説ベースであり、銀行が求める「根拠のある数字」とは異なります。AIで骨子を作った後、公的統計や業界データで数値を裏付け、自社の実績データを反映させてから提出してください。また、銀行の融資担当者は「経営者自身がこの計画をどれだけ理解しているか」を見ています。自分の言葉で説明できるレベルまで内容を咀嚼しておくことが重要です。
Q2. どのAIツールが事業計画書作成に向いていますか?
ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデル(LLM)であれば、基本的にどれでも事業計画書の作成に活用できます。重要なのはツール選びではなく、「どれだけ具体的な情報をAIに渡せるか」「フレームワークを明示的に指定できるか」という使い方の質です。私はClaudeを使っていますが、指示の出し方を工夫することで、どのツールでも質の高いアウトプットは得られます。
Q3. 経営フレームワークに詳しくなくてもAIと事業計画は作れますか?
作れます。むしろ、フレームワークに詳しくない人こそAIを活用すべきです。「事業計画書に有効な経営フレームワークを3つ提案して、それぞれどう使うか教えて」と聞くだけで、AIが適切なフレームワークの選定から使い方の説明まで行ってくれます。最初は理解が浅くても、AIとの対話を繰り返すうちに自然と経営フレームワークの使い方が身につきます。
Q4. 事業計画書は一度作ったら完成ですか?
いいえ。事業計画書は「生きたドキュメント」であるべきです。私は毎月の実績データをAIに渡して、計画との乖離を分析し、必要に応じて計画を修正しています。特に創業初期は前提条件が大きく変わることが多いので、月次での見直しを強く推奨します。「完璧な計画を立てること」ではなく「計画を通じて思考を整理し、検証と修正のサイクルを回すこと」が事業計画の本質です。
まとめ:AIは事業計画書の「思考加速ツール」であり「経営の壁打ち相手」

AIを事業計画書作成に活用する最大のメリットは、思考のスピードと網羅性の向上です。しかし3社を経営してきた経験から言うと、もう一つ大きな価値があります。それは「利害関係のない壁打ち相手」としてのAIの存在です。
事業計画書作成で押さえるべきポイントをまとめます。
- 銀行向けと自分用を分ける:用途に応じて計画書のトーンと重点を変える
- フレームワークを明示的に指定する:5フォース・VRIO・エフェクチュエーション・SWOTを使い分ける
- 損益分岐点シミュレーションは必須:楽観・標準・悲観の3シナリオで検証する
- KPI設計まで一気通貫で行う:計画書と運営ダッシュボードを接続する
- 「完璧に作る」より「素早く作って検証する」:仮説検証サイクルの速度がすべて
- 数値の根拠は自分で裏取りする:AIの出力はたたき台、最終責任は経営者にある
AIと事業計画書を作る体験は、単に計画書が完成するだけでなく、経営フレームワークの実践的な使い方を学ぶ機会にもなります。まずは小さな事業の計画から、AIとの協働を試してみてください。
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1974年長崎県生まれ。2006年に起業し、理美容室・アパレル・不動産事業を展開。その後ITコンサル会社も設立。2025年、3社目となるai株式会社を設立し、AIエージェントによる会社運営を実践中。非エンジニアながらClaude Codeを経営の右腕として活用し、SEO・広告運用・レポート自動化・顧客管理を全てAIチームで運営している。20年間の経営経験から得た知見と、AI活用の実体験をもとに発信。

