
私が経営する理美容室では、会員カードを店舗の端末にかざしてポイントを付ける会員システムを、2010年前後から使っています。会員は約1.5万人、ポイントの履歴は約30万行。2026年7月、このシステムが「新しい端末に入らない」ことが分かり、調べると、アプリのソースコードも、サーバーの管理者パスワードも、手元にありませんでした。
この記事は、その状態から、経営者本人がAI(Claude Code)と組んで、ソースの無いアプリを復元し、入れないサーバーからデータを回収し、サーバー側を一晩で作り直すところまで進めた記録です。日報システムの作り替えと同じ型で、同じ1台のサーバーに同居していたもう一つのシステムの話です。先に書いておくと、本番切替はまだ終わっていません。そこも含めて、実測で書きます。
先に、3つの数字
| 数字 | 内容 |
|---|---|
| 一晩 | レスキューブートでデータを回収してから、新サーバーの構築・データ投入・会員システムの再実装・件数照合まで(7月23日夜 → 7月24日未明) |
| 35分54秒 | AIが新しい会員システム(39ファイル)を実装した時間。配置後に本番データで見つけたバグを1件修正 |
| 0円 | 本件のために新たに払った開発費。AI開発支援ツールの月額(約3.6万円)は全事業で共用、サーバーは既存契約に同居 |
「一晩で作り直せた」と読むと誤ります。一晩はサーバー側の再実装の時間で、その前にアプリの復元に3日、サーバーに入る方法を探すのに約2週間かかっています。そして本番切替は、手順書はできていますが、この記事を書いている時点で、まだ私の決定待ちです。
自社のシステムなのに、中に入れない

きっかけは、店舗用のAndroidアプリが新しい端末に入らなくなったことでした。アプリは2017年ビルドで、Android 14以降はインストール自体を拒否します。端末が壊れたら、次の端末では動きません。そこから調べて分かった状況は、次のとおりです。
| 問題 | 実態 |
|---|---|
| 新しい端末に入らない | 店舗用アプリは2017年ビルド。Android 14以降はインストールを拒否する |
| ソースコードが無い | アプリのソースは現存せず、正攻法の改修ができない |
| 管理者パスワードが不明 | サーバーOSのrootパスワードを誰も知らない。作った会社とは疎遠で、ホスティング会社は「サポート終了OSなので支援できない」 |
| セキュリティ | 会員検索にSQLインジェクションの脆弱性、デバッグモードがON、通信は平文のHTTP |
| 同じサーバーに同居 | 旧日報と旧会員システムは、同じ1台の格安VPS(月660円)に同居。片方だけ直しても、もう片方が残る |


会員データはすべてサーバー側にあり、端末のアプリは実質「専用ブラウザ」でした。つまり、アプリを作り直しても、サーバーに入れなければ会員情報は取り出せません。ここが日報と違う点で、日報は旧サーバーからソースを取得できましたが、会員はサーバーに入る方法そのものから探す必要がありました。
何をしたか。実測タイムライン
日付は作業リポジトリの変更記録から取りました。アプリの復元が先、サーバーの回収が後、という順です。
| 日付 | 作業 |
|---|---|
| 7月9日 | ソースの無い旧アプリを逆コンパイルして全構造を復元し、Android 15対応で再ビルド。NFC・通信・画像アップロードを現行仕様へ移植 |
| 7月11日 | 配布ページを公開。会員と店舗が自分でダウンロードして入れ替えられる導線 |
| 7月12日 | 3店舗で「入らない」原因を実測で特定(旧アプリの未削除→署名不一致)。rootパスワード不明・SQLインジェクション・デバッグONを確認し、ホスティング会社へ正式に問い合わせ |
| 7月13日 | 管理者ページが白画面になる真因(新しいWebViewがスペース入りリンクを拒否)を修正して再配布 |
| 7月20日〜23日 | データ移行の可否調査、要件定義書、移設計画書(段階0〜4)、レスキューブート手順書を作成 |
| 7月23日 夜 | 営業時間外にレスキューブート。ソース一式911MBとDB 71MB、稼働中DBの論理ダンプも取得。会員約1.5万・履歴約30万行・全23テーブルを確認 |
| 7月24日 0時台 | 旧フレームワークのPHP 8移植は不成立と判定(削除された構文が数百箇所)。新サーバーにDB・サブドメイン・HTTPSを自動構築し、ダンプを投入して件数完全一致 |
| 7月24日 0:20〜0:56 | AIが新会員システム(39ファイル)を35分54秒で実装。配置後、NFC会員照合のバグを本番データで検出して修正(登録済みカード全件で照合正解、誤り0) |
| 7月24日 | テスト版アプリ(実務アプリと共存できる別パッケージ)をビルドして配布。以後、全店でテスト運用 |

レスキューブートという手段
rootパスワードが分からないサーバーに入る正攻法は、ホスティング会社の救済モード(レスキューブート)で別のOSから起動し、ディスクを直接読むことです。営業時間外に実施し、ソース一式とデータベースを回収しました。ここで初めて、会員約1.5万人・履歴約30万行・全23テーブルという全体像が確定しています。
回収したソースをPHP 8へ移植する案は、深夜0時台に不成立と判断しました。旧フレームワークが使っていた構文がPHP 8では数百箇所削除されていて、直すより作り直すほうが速いと分かったからです。そこから新サーバーを自動構築し、回収したデータを投入して件数が完全に一致したことを確認してから、AIに会員システムを実装させました。
本番データで見つかった1件
実装直後、NFCカードの会員照合に誤りが出ました。テストデータでは通り、本番データで初めて出たバグです。登録済みカード全件で照合を回し、誤り0になるまで直してから、テスト版アプリを配布しました。「動いた」と「全件正しい」は別で、後者は本番データでしか確かめられません。
新しいシステムの画面


構成はPHP 8とMariaDB、通信はHTTPSです。アプリは実務用と共存できる別パッケージのテスト版で、全店に配布しています。会員情報とポイントはサーバー側にあるので、アプリを入れ替えても消えません。
まだ終わっていないこと

- 本番切替が未了です。切替の手順書(旧サーバーの凍結→最終データ取得→新サーバーへ再投入→件数照合→実務アプリの切替→ロールバック期間→旧サーバー停止、営業時間外に1〜2時間)は7月24日に作ってあります。残っているのは私の決定4件です。①本番のドメインを新サーバー側で継続するか(継続ならDNS変更は不要) ②旧システムの会員写真約760件の扱い(保存形式が新側と合わず、破棄して必要時に再撮影するか、変換して移すか) ③切替日時 ④ロールバック期間の長さ(目安1〜2週間)。全店でテスト運用を続けていますが、旧VPSも止めていません。月660円という金額より、「サポート終了OSの上に約1.5万人分の会員データを置き続けている」ことが実質のリスクです
- 「一晩」は全体ではありません。アプリの復元に3日、サーバーに入る方法の確定に約2週間、その後の改修が10日にわたっています
- 保守は私とAIに依存しています。私が動けなくなったら誰が直すか。外注の「属人性の低さ」にはかないません。要件定義書・移設計画書・手順書で補っていますが、ゼロにはなりません
- 外注した場合の概算は、実際の見積ではありません。次の節の数字は公開相場からの積み上げで、条件により上下します
日報の作り替えでは、並行稼働のあと「いつ旧を止めるか」を人が決めて切り替えました。会員も同じ型で進めるつもりで、この記事は切替前の記録です。切り替えたら、その結果を追記します。
外注していたら、いくらだったか

相見積を取った金額ではなく、公開されている市場相場から積み上げた机上の概算です。実際の見積は要件・業者・地域で大きく変わります。
| 項目 | 外注した場合の概算 | 今回 |
|---|---|---|
| 開発費 | 400〜840万円(5〜7人月)。現状調査・サーバー復旧0.5、要件定義0.5、会員約1.5万人・履歴約30万行のデータ移行0.5〜1、サーバー側の再実装(会員・ポイント・履歴・管理画面・店舗端末画面)2〜3、ソース無しアプリの復元と再ビルド1〜1.5、切替・テスト0.5。人月単価は地方の中小開発会社を想定して80〜120万円 | 追加の開発費 0円。AI開発支援ツールの月額(約3.6万円)は全事業で共用。アプリ配布ページはCDN事業者の無料枠、新サーバーは既存契約に同居 |
| 運用保守 | 開発費の15〜25%/年が相場。上の開発費に当てると年60〜210万円 | 経営者本人の時間と、同じ月額ツール。旧VPS(月660円)は切替完了後に解約予定 |
| 受けてもらえるか | ソース無しのアプリ復元とサポート終了OSからの回収は、請けられる会社が限られる。「ソースが無いので作り直しましょう」が通例で、その場合は上記を超える | 逆コンパイルでの復元、レスキューブートでの回収、再実装まで同じ担当(私とAI)で通した |
「0円でできた」と読むと誤ります。ツールの月額は共用で無料ではなく、私の時間は機会費用として発生しています。外注には契約不適合責任、保守の約束、担当者の引き継ぎという価値があります。それでも、数百万円の見積を取って検討する案件が、サブスクの範囲で「その週のうちに動くか」の判断に変わったことは事実です。日報(440〜900万円)と合わせると、外注概算は840〜1,740万円に対して、追加の開発費は0円でした。
概算の前提にした公開相場: 発注ラウンジ「人月単価とは?」、SIA「受託開発費用相場」、ITトレンド「システム開発費用の相場」。リンクの生存は2026年8月23日に確認。概算は当社の一例で、同様の条件で同じ金額になることを保証するものではありません。
経営者に持ち帰ってほしい3つの話

- ソース・管理者権限・データの出し方を手元に。外注の納品物に最初から入れておく。無いと、10年後にレスキューブートで回収する羽目になります。今回の2週間は、この3点が無かったことの代価です
- 古いものは「放置が集中する場所」で同時に止まる。旧日報と旧会員は同じ1台のVPSに同居し、同じ開発会社、同じフレームワーク、同じ時期のPHPでした。片方が古いなら、もう片方も古い。サポート終了の通知は来ません。「あのサーバーに何が載っているか」を一覧にするだけで、次に止まるものが見えます
- 「動いた」と「全件正しい」は別。件数の完全一致、登録済みカード全件の照合、テスト版の別パッケージ配布。切替は、これが揃ってから人が決めます
自分でやる型と任せたい型
ここまで書いたのは、私が自分の理美容室の会員システムを、ソースの無い状態から自分で回収・再実装した記録です。自分で手を動かしたい経営者には、ai株式会社の「自分でやる型(伴走)」があります。古い業務システムの作り替えや運用を任せたい場合は、「任せたい型(受託)」として受けます。窓口はai株式会社、実装と保守はグループの株式会社GlobalBが担当します。内容に応じた個別見積です。まずは「無料で相談する」からで構いません。
よくある質問
ソースコードが無くても作り直せますか
アプリは逆コンパイルで構造を復元し、Android 15対応で再ビルドできました。サーバー側はソースを回収しても旧フレームワークのPHP 8移植が成立せず、作り直しました。「無くても何とかなる」ではなく、「無いと復元と作り直しの両方が要る」が実態です。
レスキューブートは誰でもできますか
ホスティング会社が提供する機能で、手順自体は公開されています。ただし営業時間外に実施し、稼働中のデータベースの論理ダンプも同時に取り、回収したファイルの件数をテーブルごとに照合する、という段取りは手順書を作ってから実施しました。ぶっつけでやるものではありません。
なぜ本番切替をまだしていないのですか
日報と同じで、「いつ旧を止めるか」は人が決めると最初に決めているからです。手順書は7月24日にできていて、残りは私の決定4件(本番ドメインの扱い、旧会員写真の扱い、切替日時、ロールバック期間)です。テスト版アプリを全店で使い、会員照合とポイント付与が実務で問題なく回ることは確認できています。決めたら手順書どおりに切り替え、この記事に結果を追記します。
会員の個人情報はどう扱いましたか
回収したデータは新サーバーにHTTPSで置き、旧サーバーの平文通信とデバッグモードは新側では使っていません。記事に載せた画面は、社名・会員情報が写らない画面だけを選び、ロゴは伏せています。
まとめ
- ソースも管理者パスワードも無い会員システムを、アプリの復元(3日)→サーバーの回収(レスキューブート)→サーバー側の再実装(一晩)の順で進めた
- 会員約1.5万人・履歴約30万行は件数完全一致で移行し、NFC照合は登録済みカード全件で誤り0を確認してから配布した
- 外注概算400〜840万円(実際の見積ではない)に対して、追加の開発費は0円。ただしツール共用・機会費用・属人性の弱点はある
- 本番切替は未了。「いつ旧を止めるか」は人が決める。切り替えたら追記する
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この記事の作り方 本文はAIが下書きを作り、当社代表が内容を確認・修正したうえで公開しています。図版の一部もAIで生成しています。当社はAIを業務に組み込んで経営している会社で、記事もその実践の一部です。
